
日進月歩で進化しているIT業界とよく聞きますが、Web自体も時代と共に進化し、新しいカタチに移行しています。
現在は Web2.0 の時代で2005年から続くSNS時代であると言われていますが、分散型の Web3.0 の時代がやってくると言われ、注目されています。
そこでこの記事では、訪れようとしている新たなWebの時代である「Web3.0」がどのようなものなのか、わかりやすく解説します。
1. Webの進化と変化
新しい時代のWebとして、今、Web3.0 という概念が注目を浴びています。この項目では、Webの進化の過程について解説します。
Webの進化
これまでWebは、次のように進化してきました。
Web1.0…ホームページ時代(1995年〜)
Web2.0…SNS時代(2005年〜)
Web3.0…ブロックチェーン時代(これから)
90年代から2000年代前半まではホームページ時代で「一方通行のインターネット」と呼ばれていた時代で、情報発信をするのはごく一部の人たちだけでした。インターネットへの接続はダイヤルアップ回線(電話回線)を使用していたため、接続速度が遅く、画像表示には非常に長い時間がかかりました。Yahoo!や Google、MSN サーチなどが登場し始めた時期でもあります。
その後、光回線が登場しインターネットの接続速度が高速化しました。高画質な写真や動画をストレスなく楽しめ、多くの人がインターネットに常につながっている状態となりました。
2007年1月に初代iPhoneが発表され、その後、スマートフォンが爆発的に普及しました。インターネットがより一層身近になり、YouTube、Twitter、InstagramなどのSNSの登場によって誰もが発信者となりました。これがWeb2.0時代で、まさに現在のことです。インターネットが生活に欠かせないものになった時代とも言えます。
そして今まさにこれから、Web3.0へと進化していくところです。
社会の変化(マクロ環境とミクロ環境)
インターネットの発達と Web の進化により、私たちの生活はますます便利になっています。
Web を介したサービスを使うほど、生活の中で起こるさまざまな事柄や行動、趣味や趣向は、IoTやAIなどの技術革新を通じて分析されてデータへと変換され、GAFAM をはじめとしたメガ企業や一部の機関にあらゆる情報が集中します。
ところが、現在のネットワークでは、変換されたデータがどのように取り扱われどう活用されているか、正当性が担保されているとは言えない状況です。実際、ユーザーの知らないところで個人情報が利用されているケースがたびたび報道されており、web のデータ管理・活用に関する問題は表面化していると言えます。
このような課題を解決する手段として注目されているのが、ブロックチェーン技術を基盤とするweb3.0 です。web3.0 は、ブロックチェーン技術によって実現する分散型ネットワークのことです。分散型ネットワークでは、ユーザー自身がデータの所有権を持ち、データの利用をコントロールできるようになるのが大きなメリットです。
こうした社会の変化により、Web3.0 は理想として語られるWebの未来ではなく、実現されるべきWebの未来として認識されるべき概念と言えます。Web3.0 によって、現在の個人情報などの膨大なデータが大企業や一部の機関に集中・独占されている中央集権型ネットワークの問題を解決し、誰でも相互閲覧・検証が可能なクリーンなネットワークが構築されることを意味しています。
歴史的な信頼の変化
インターネットの利用において個人情報を取得する企業に対する信頼感は、Web2.0では大きく変化しました。
インターネットを利用すると、個人の属性情報や購入履歴など、多くの個人情報が生まれます。この個人情報はユーザー数の増加に比例して増えていきます。この膨大な量の個人情報に価値があると気付いた企業は、無償で提供する便利なサービスと引き換えに個人情報を取得し、ほかのビジネスに利用して巨額の利益を得てきました。
その結果、私たちユーザーは、提供されたサービス以上の利益を企業が得ていないか、ユーザーが意図しない形で個人情報を利用していないか、さまざまな不信感を抱くようになりました。そして、企業側のセキュリティ対策の不備やハッキングによって個人情報が漏洩するたびに、そのリスクに対して心配するようになっていきます。
このような個人情報に関する問題を解決するために、ブロックチェーン技術を使ったWeb3.0が登場しました。Web3.0では、特定企業による個人情報の独占的な利用やセキュリティ対策の不備による情報漏洩の心配がなくなります。むしろそうした個人情報を個人の意思に基づいて利用できるようになるため、利便性がよくなります。
2. Web3.0とは
これから進化していくWeb3.0 とは、一体どのようなもので、私たちの暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。ここでは、変化を生み出すWeb3.0 の概要や特徴について解説します。
Web3.0とは何か?
定義が明確ではありませんが、Web3.0 はブロックチェーン技術によって変化するものと予測されています。web3.0 は、web2.0 のデータ独占・改ざんの問題を解決する概念として構想されており、その中核として重要なのが「ブロックチェーン技術」です。
ブロックチェーン技術とは、データの書き換えを非常に困難にする技術のことです。データを世界中のコンピューターに分散して管理しており、不正ができず、システムが突如ダウンすることもありません。ビットコインなどの仮想通貨も、非代替性トークンであるNFTも、ブロックチェーン技術がベースになっているものです。
Web3.0に必要な要素
Web3.0のデジタルアイデンティティの構成要素として、DeFiやNFTなどのブロックチェーン上のデジタルアセットが役立つと考えられています。特にWeb3.0の領域では、複数の要素を掛け合わせたビッグトレンドが誕生しています。
DeFi(分散型金融)
ブロックチェーンを活用し、中央管理者が不在の状況で提供される金融サービスをDeFiと呼びます。金融サービスを使う際、これまでは銀行や証券会社などを利用する必要がありましたが、DeFiでは仲介企業を介さずにローンやレンディングなどの金融サービスを利用できます。
NFT
NFTとは、固有のデータが記録されたトークンのことを指します。ゲームのキャラクターやアイテム、アートなど、さまざまなものに応用されており、アーティストのコアなファン向けのデジタルアイテムとして高値がつくNFTが生まれています。多くの知財(IP)ホルダーが参入を始めており、日本国内でも事例が増え始めています。
SocialToken
ソーシャルトークンとは、特定の個人やグループなどに紐づくトークンのことを指します。個人ならパーソナルトークン、コミュニティならコミュニティトークンと呼ばれることもあります。特定の個人やグループと交流することに重点を置いています。
3. Web3.0の特徴
Web3.0は、Web2.0とは大きな違いがあります。この項目では、特に大きく異なる特徴を3つ挙げて説明します。
プライバシーの独占
Web3.0 で解決できることで最も重要なのが、プライバシーを守ることです。
Web2.0 では、特定企業に個人情報が集中し、個人のプライバシーが侵害される可能性があり、問題視されています。
現在、GAFAM と呼ばれる一部の大企業に、住所や年齢などの基本的な個人情報のほか、個人の嗜好や行動履歴などのあらゆる情報が集まっている状態となっています。このような状態にあることを、プライバシーの観点から問題視する声が多く上がっており、個人のプライバシーの保護は重要な課題となっています。
Web3.0 では、サービスを使う際にIDやパスワードなどの個人情報を提示する必要がないため、悪用されることも流出することもありません。また、情報漏洩のリスクを懸念する企業の管理者にとっても、大きなメリットであると言えるでしょう。
脱中央集権
Web2.0 の問題点は、中央集権に生じるセキュリティの問題です。現在、ユーザーの個人情報はサーバで集中管理されているため、個人情報の流出や不正アクセス、データの改ざんなどのセキュリティリスクがあります。
過去には、2021年12月に LinePay で13万人の個人情報が、2019年には Facebook で5億3000万人を超えるユーザーの個人情報が流出しています。このように、サーバが攻撃されると、個人情報が大量に流出したりWebサービスが利用できなくなったりします。
中央集権型では、サーバーがダウンすると障害が発生しサービスを利用できなくなりますが、Web3 ではそういった懸念から解放されます。
分散と表現の自由化
Web3.0 では、中央集権組織が存在しない分散型のネットワークです。そのため、あらゆる組織および機関の承認が不要で、誰でも参加できます。SNSに投稿する内容や入手できる情報を検閲したり制限したりする組織が存在しないため、地理的条件や思想などに差別されず、誰でも利用できます。
Web2.0 ではインターネットが中央集権的で、一部の組織によって管理されています。そのため、中央組織の承認を受けて Web 上での活動をしないと、制限が生じます。ただし、あるSNS運営企業が自社プラットフォームに書き込める内容に制限を設けたり、国や政府が閲覧できるウェブサイトを限定したりした場合、表現の自由に抵触する可能性があります。
4. Web3.0で変わる世界
Web 3.0の登場によって、世界はどのように変わるのでしょうか。分散型技術を土台としたWeb 3.0のさまざまな利点および特徴によって変わることを3つ、ピックアップして紹介します。
Web2.0の課題解決
Web2.0には、大きく分けて次のような3つの問題があります。
- 個人情報やプライバシーの問題
- セキュリティ
- ネット検閲
このような課題が Web3.0の登場によって変わると考えられます。
Web3.0では、単一の中央管理者が存在しません。そのため、ユーザー自身がデータの管理権を持ち、ユーザーの許可なくデータが利用されることはありません。現在のWeb2.0のように、ユーザーが知らないうちにデータが売買される状況が改善されることでしょう。
Web 3.0ではブロックチェーン技術が使用された分散型ネットワークとなるため、暗号化した情報を複数のユーザーが共有します。Web 2.0では、特定の企業やサーバーに情報が集約されています。そのため、サーバーが攻撃されたりハッキングされたりすると、個人情報流出のリスクがあります。ところが、Web 3.0は情報が分散されているため、そのようなリスクを回避できます。
Web 3.0のように中央集権組織が存在しない分散型ネットワークには、情報を検閲・制限する組織が存在しないため誰でも利用可能です。世界には、日本のように誰しもが自由にインターネットを利用できない国があります。国による独自の検閲システムが存在し、政府によってGoogleや Twitter、YouTube などのサイトへのアクセスが禁止されています。
ところが、Web3.0 ではそのような制限を設けることができません。ブロックチェーンへの参加に条件や権限がないうえ中央集権的なサーバーが存在しないため、誰でも自由に希望するサービスへアクセスできます。
デバイス、OSからの開放
Web3.0 では、特定のOSやデバイスを介さずにアプリやサービスを利用できます。現在では、AndroidやiOSなどのOSごとにアプリを開発しなくてはならず、中には、Androidでは利用できるのにiOSでは利用できないというアプリもあります。Web3.0ではOSやデバイスに関係なく、アプリやサービスを使えるようになるでしょう。
サービス利用がシームレス化
Web3.0 では、データをインターネット上で検証できるようになります。これにより、企業などの組織が、必要以上に多くのデータを保持する必要がなくなります。その結果、データの断片化が起こらず、シームレスにサービスを活用できるようになります。
サービスの安定稼働
Web3.0 がもたらすメリットに、サービス稼働の安定化があります。
Web3.0 によってあらゆる情報が分散管理されると、ユーザーは、インターネットに接続されているさまざまなデバイスを通じて必要な情報を取得できるようになります。サーバーを経由しなくてもユーザー同士の情報通信が行えるため、アクセス負荷によるサーバーダウンといったトラブルの回避につながります。
5.Web3.0が創り出すのはクリーンな経済活動ができる社会
Web3.0 はこれから訪れる未来の世界であり、明確に定義をすることはまだできません。
とはいえ、以上のようなことから、web3.0が広く普及した社会は、情報の正確性があるクリーンな経済活動が行える社会であると推測できます。Web3.0 がどのような形に進化していっても、これからのWeb世界を変えていくことは間違いないはずです。