メタバースとは?概念・将来性・NFT や仮想通貨との関連をわかりやすく解説

メタバースとは、AR (拡張現実)と VR (仮想現実)に対応する端末を使い、多くの人びととつながるデジタル空間のことです。

インターネット上に展開される先進的な仮想空間サービスを指す総称として用いられますが、メタバースがどのようなものなのか、よくわからないという人は少なくありません。

 この記事では、メタバースを知るうえで必須の関連用語から、メタバースの可能性、 NFT や仮想通貨との関連性のようなメタバースを知る上で重要なトピックスまで、メタバースについてわかりやすく解説します。

1. メタバースとは

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メタバースとは、古代ギリシャ語で超越を意味する「 meta 」と宇宙を意味する「 universe 」という 2 つの単語を組み合わせた造語です。近年、メタバースは、シリコンバレーやゲーム業界を中心に世界的に話題になっています。

 ここでは、メタバースの概要とメタバースを理解するために知っておきたい関連用語について解説します。

メタバース

メタバースとは、人びとが活動できるようインターネット上に構築された三次元世界や仮想空間のことを指します。

 メタバースという単語は、 1992 年に SF 作家のニール・スティーヴンスンが発表した「スノウ・クラッシュ」という小説に最初に登場しました。

その後、 1986 年に発表されたビデオゲーム「 Habitat 」がメタバースに近い世界を最初に実現し、その後、 3DCG で構成された仮想世界「 Second Life 」が 2003 年にローンチされました。「 Second Life 」は、現在も運営されています。

 現在では、仮想世界を楽しむゲームは複数存在しています。任天堂の「あつまれ どうぶつの森」はメタバースの一種です。「あつまれ どうぶつの森」は、ユーザーが自分の分身であるアバターを介して世界を楽しみます。

 これまでの家庭用ゲーム機にあったバーチャル空間とメタバースの違いは、 3D であること、アバターが存在すること、ほかのアバター(ユーザー)と 3D 空間を共有すること、空間内にオブジェクトを作れることなどです。メタバースという仮想世界の実現に、ゲームという手法が役立っています。

メタバース関連用語

メタバースを理解するには、ブロックチェーン、 NFT 、暗号資産(仮想通貨)といった関連用語を理解する必要があります。この項目では、メタバースを知る上で理解しておきたい関連用語について解説します。

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、取引の内容を履歴として残し、改ざんから守る技術です。ネットワーク内で発生した取引の記録を、ブロックと呼ばれる塊に格納します。過去から現在までの取引履歴を格納した 1 つ 1 つのブロックが時系列に沿って繋がる構造がブロックチェーンのように見えるため、このように呼ばれています。

 ブロックチェーンは、データの破壊・改ざんが極めて難しい仕組みです。ある取引について情報を改ざんしようとした場合、それよりも新しいすべての取引データを改ざんしなくてはならず、改ざんが困難です。そのためブロックチェーンは、改ざん耐性に優れたデータ構造を持つと言われています。

 ブロックチェーンは、メタバースで利用されている NFT というデジタルデータに利用されています。

NFT

 NFT とは Non Fungible Token の略で、代替不可能なトークンのことです。トークンとは、キャッシュレス決済の際に必要な本人認証に使われる認証デバイスであるというとわかりやすいかもしれません。

  NFT はブロックチェーンを利用したデジタルデータの一種で、画像や動画、アートや音楽、コレクターズアイテムのような唯一無二で代替不可能なデジタル資産に、所有証明書をブロックチェーン上に記録し、固有の価値を持たせます。

 これまでメタバース内にあるアイテムは、簡単にコピーを作れたり、サービスの提供が終わると手元にアイテムが残らなかったり、さまざまなデメリットがありました。

メタバース内では、これまでゲーム内通貨で取引されていましたが、 NFT によって仮想通貨や法定通貨を使用できるようになり、メタバースの外でも取引ができるようになりました。

NFT によって、アイテムのコピーができなくなったこと、台帳が存在するため所有権を明確に示せることも大きなメリットであると言えます。

暗号資産(仮想通貨)

暗号資産(仮想通貨)とは、インターネットを通じて不特定多数の間で、商品等の対価として使用できる通貨です。暗号資産(仮想通貨)は取引の全データの集合体で、私たちが日常で使っている円やドルなどの法定通貨のような実物はありません。インターネット上でのみやりとりできる通貨という機能を持ちます。

暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーンによって全取引データを永遠に記録します。法定通貨の場合、中央集権型のため、送金や決済の際に銀行が管理する台帳に取引データを書き込まなければなりませんが、暗号資産(仮想通貨)は非中央集権型のため管理者がおらず、送金や決済時の手数料がほとんどかかりません。

 仮想通貨と聞いてビットコインを思い浮かべる人は少なくないのではないでしょうか。ビットコインは、最初に登場した仮想通貨です。仮想通貨にはビットコインを含めてさまざまな種類があり、取引量は年々増加傾向にあります。

 

2.メタバースが未来を変える可能性

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メタバースは、単なる仮想現実ではありません。また、 VR や AR だけでもありませんし、 PC やモバイル、ゲーム機などすべてにアクセスできるマルチプラットフォームに成長していく可能性を秘めています。

 ここでは、メタバースが未来を可能性について、実例を挙げながら解説していきます。

メタバースがもたらす可能性

メタバースによって、以下のようなことが実現すると考えられています。

・作業効率が大幅に高まる

・情報をより早く届けられる

・非日常を体験しやすくなる

メタバースによって、移動コストや誰かと会うための物理的なスペースが必要なくなり、より安価でスピーディな価値を提供できるようになります。

 音楽のライブやダンス、フィットネスなどさまざまなイベントの体験はもちろん、空を飛んだり、高速で移動したりなどの非日常な体験を、現実世界にいながら楽しめるようになります。

いつもの場所にいながらまるで別の場所にいるかのような、 2D アプリや Web サイトでは体験できないような体験ができるようになります。

ワークスペースとしてのメタバース

メタバースは、ワークスペースとしても活用できます。実際にフェイスブック改めメタは、バーチャル会議室「 Horizon Workrooms 」のオープンベータ版を一般公開しています。オープンベータ版とは、メタの傘下である Oculus が 2020 年 10 月に発表した「 Oclus Quest 2 」のことで、誰でもダウンロードできます。

 「 Horizon Workrooms 」は、自分のアバターや一緒に仕事する人びとのアバターが同じスペースに集まり、一緒に仕事できるバーチャル会議室です。

「 Horizon Workrooms 」ではアバターと空間オーディオ技術を使っており、同僚のアバターが着席している方向から声が聞こえてきますし、ホワイトボードにPCの画像を貼り付けて共同編集し画像として共有できます。物理的にはそばにいない同僚とまるで一緒にいるような感覚で会議を進められます。

XR領域における大型イベントの企画・制作・宣伝や、パートナー企業との新規事業開発を手がけるVR法人 HIKKYが主催する「バーチャルマーケット」というイベントがあります。「バーチャルマーケット」では、現実世界と同様にショッピングを楽しむことができます。

「バーチャルマーケット」には世界中から100万人以上の人が訪れ、過去のイベントでは、JR東日本やヤマハ発動機、NTTdocomo、BEAMSなど、さまざまな分野の企業が出展しています。

VR法人HIKKY https://www.hikky.life/

好きな場所に暮らしながらさまざまなビジネスコミュニティに属して仕事やビジネスができるのも、メタバースの恩恵です。大都市に偏っていたビジネスチャンスやネットワークが地方まで広がり、多くのチャンスやコラボレーションが生まれる可能性を秘めています。

メタバースが新たな仕事を創り出す

メタバースは、今存在していない新たな仕事を創り出す可能性があります。アバターを使えば、障がいがある人が不自由なく移動したりコミュニケーションを取れたりできるからです。

 実際、 2021 年 10 月 21 日にリリースされた「メタジョブ!」のベータ版は、場所はもちろん、年齢、性別、外見のような身体的な要素に縛られず、新しい働き方を探している人に向けたジョブマッチングサービスとして、オンライン接客やオンライン上でのファシリテーターなどのような今までにない新たな仕事を生み出しています。

 少子高齢化により、日本の生産年齢人口は今後急激に減少し、人手不足が深刻化していくことが予想できます。メタバースによって生み出される新たな仕事が、地方やアクセスが悪い地域に住んでいて選択肢が少ない人、子育てや介護のためまとまった労働時間を確保できない人、身体的な理由で新たな一歩を踏み出せずにいる人など、さまざまな求職者の応募に対するハードルを下げ、働くチャンスを生み出します。

メタバースによる知の共有

図書館や博物館のような公共スペースがメタバースに存在すれば、より多くの市民に、情報や体験価値を安価に届けられるようになります。

 米銀行大手バンク・オブ/アメリカのハイム・イスラエル氏が率いるチームでは、ニューヨーク公共図書館の全蔵書を 20 秒でダウンロードできる第 6 世代( 6G )通信ネットワークなど、テクノロジー面の「ムーンショット」として 14 項目を挙げています。ムーンショットとは、困難だが実現すれば大きな営業をもたらし得る挑戦のことを指します。

 そして、このような人びとの生活を一気に変える可能性がある技術が実現する日は、今考えているほど遠い未来ではないとも発言しています。

 メタバースは 14 項目のうちの 1 つで、実現すれば、公共施設の建設に向けられてきた公的資金がデジタルコンテンツに流れ込む可能性があります。すると、知の共有が一気に進んでいくでしょう。


3.NFT や仮想通貨との関連性

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近年、 NFT が仮想通貨業界でブームとなっています。さらに、 NFT とブロックチェーン技術を活用したメタバースにも注目が集まっています。

 この項目では、メタバースと NFT や仮想通貨との関連について、解説していきます。

NFT との関連性

ブロックチェーンを活用しているメタバースは、 NFT の活用が必須です。 NFT  は所有権やプレミアの証明を行うため、メタバース上で提供されるサービスやプロダクトの幅を広げることができるからです。

 実際に NFT が活用されている事例は次の通りで、多岐に渡ります。

・土地
・建物
・会員権
・デジタルアート(芸術作品)

 特定の NFT を所有する人だけが出入りできる土地や建物を用意したり、 NFT の所有に応じて受けられるサービスが異なるシステムをメタバース上に展開したり、 NFT によって表現の幅が広がり楽しみが増えますし、メタバース上での秩序の構築もしやすく、可能性は大きく広がります。

2021年11月には、カナダの投資会社がメタバースの土地を243万ドル(約2億8000万)で購入したことも話題になりました。購入した地所は、デジタルファッションショーの開催やファッションブランドと連携したEコマースサービスの展開に使用される予定です。 
参考資料:カナダの投資会社、メタバースの土地を約2億8000万円で購入

仮想通貨との関連性

仮想通貨と NFT をメタバースで活用すれば、メタバース上でアイテムやサービスの売買を安全かつスピーディにすることができます。

 メタバース単体では所有権証明書を記録できないため、デジタルコンテンツの売買ができません。また、所有権がないため不正なコピーできてしまったり、サービス終了とともに所有していたアイテムが消失してしまったりというデメリットがありました。

 NFT によってデジタル所有権を証明すればアイテムやサービスの売買ができますし、取引に仮想通貨を使えば、よりスピーディに国境を越えた取引ができます。

 NFT 、仮想通貨を使え場、現実世界と同じような取引が、メタバースで実現します。


4. メタバースに当てはまるゲーム

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メタバースは、仮想世界を楽しむゲームに多く利用されています。ここでは、仮想世界を実現するためにメタバースを利用しているゲームタイトルを3つ、紹介します。

フォートナイト

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フォートナイトは、 Epic Games が提供しているバトルロワイヤルゲームです。
フォートナイトでは、ユーザーがコンテンツを作れるクリエイティブモードを提供しており、鬼ごっこやかくれんぼのようなミニゲームをプレイしたり、ユーザー自身が作った自分のスキンや動きを見せ合ったり、友達と都合のいいタイミングで合流しボイスチャットで会話したり、ユーザー同士のコミュニケーションを楽しめます。

マインクラフト  

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Minecraft (マインクラフト)は、 2009年 に Notch 氏が開発を始めたサンドボックス型のものづくりゲームです。ブロックやエンティティで構成された 3D 環境の中で世界を自由に構築します。アバターのコスチュームの変更やプレイヤーのオリジナリティあふれる建物の構築はもちろん、プレイヤー同士がいっしょになってサバイバルを楽しめます。

 マインクラフトは、現在、ブロックチェーン技術を取り入れようとしています。近い将来、マインクラフトの世界の中でゲームアイテムなどの売買ができるよう、開発を進めています。

あつまれ どうぶつの森

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「あつまれ どうぶつの森」は、任天堂から 2020 年に発売されたゲームです。のんびりとした世界観の中、スローライフを楽しめるゲームです。

 プレイヤーが暮らす島を、プレイヤー自身が地形からデザインできます。「夢番地」という機能を使えば、フレンドではないほかのプレイヤーが作った島を訪問できるため、企業や自治体の利用も増えています。 2020 年のアメリカ大統領選挙では、ジョー・バイデン氏が選挙活動用に島を公開し、話題となりました。

 マイデザインという機能を使えば、プレイヤーが自分で洋服や看板をデザインできます。なかには、有名アパレルブランドが自社ブランドを元にしたデザインをマイデザインで公開しています。

今のところ「あつまれ どうぶつの森」の中での経済活動はありませんが、企業等からの注目が非常に高いことがわかります。

 

5.メタバースに力を入れている企業例

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メタバースに注目しているのは、フェイスブック改めメタだけではありません。ここでは、メタバースの開発に力を注ぐ企業を3社、紹介します。

Microsoft 

マイクロソフトは、米国時間の2021年11月2日、既に展開しているWeb会議ツール「 Microsoft Teams 」をメタバース向けに拡張する「 Mesh for Microsoft Teams 」を発表。 2022 年から提供を開始する計画を明らかにしています。

「 Mesh for Microsoft Teams 」は、物理的に異なる場所にいる人が集い、共通のホログラフィックエクスペリエンスを通じて共同作業できる機能と、仮想会議への参加、チャット送信、共有ドキュメント上での共同作業などを可能にするツールを融合しました。

これにより、同じ仮想空間を共有する1つのチームとして、個人の積極性を高め、チームの効率化が進みます。2022年には、 VR HMD や Hololens 2 を装着して会議をするのが当たり前になっているかもしれません。

グリー

日本のソーシャルゲームプラットフォームとして知られるグリーは、2021 年 8 月、グリーは、メタバースへの本格参入を発表し、2024年までに100億円規模の事業投資を行うとしています。

 REALITY は、グリーの子会社である REALITY によって2018年8月に VTuber のライブ配信を視聴できるアプリとして誕生。その後アップデートを重ね、現在のようなアバターを使ったバーチャルライブ配信アプリへと成長しました。

 メタバースでは、アバターを介したリアルタイムでの音声コミュニケーションはもちろん、広がりある空間の移動ができ、メタバースとリアルの経済が接続した状態を生み出すことを目指します。

Diarkis

Diarkis は、Diarkis 社が独自に開発したサービスを提供するネットワーク通信エンジンです。

 Diarkis とは、メタバースの世界の規模に合わせたスケーリングのために、クライアントとサーバー間のリアルタイム通信を処理するネットワーク通信ソフトウェアエンジンです。 Kubernetes の上で動作するように設計されています。

 Diarkis は、マッチメイキング、ルーム形式のマルチプレイヤーコミュニケーションや MMO 形式の機能などのメタバースに必要な機能を備え、メタバースのオンライン部分の開発をすぐに開始できるのが特徴です。

 Diarkis は、簡単にサーバークラスターを構築できます。 Kubernetes を使い、リアルタイム通信サーバーをオートスケールするよう設計されています。 Diarkis サーバークラスターは自律的に動作し、新しいバージョンのサーバープログラムをデプロイしてもサービスを中断することなく、サーバープログラムを更新することができます。

 Diarkis では、 Diarkis Room 、 Diarkis Field 、 Diarkis Group 、 Diarkis MatchMaker 、 Diarkis P2P などのメタバースを造るための機能を提供しています。 Diarkis では、メタバースを造りたい方への新サービス開発支援として、サーバーやインフラに関する技術的なコンサルティングも行っています。

5.メタバースは新たな技術と結びつき進化していく仮想空間
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メタバースとはインターネット上に作られた 3D の仮想空間です。IT業界やソフトウェア業界を中心に、メタバースへの参入が進んでいます。

メタバースと NFT 、仮想通貨が結びつき、さまざまな新しい技術がメタバースに集約されていくことになるでしょう。メタバースによって現実世界の代替のような世界が構築され、私たちの生活は進化し、変わっていくはずです。

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