次世代通信の5Gは、スマホの通信やIoTなどの生活面だけではなく、ゲームをはじめとしたエンターテイメント面でも活用が期待されています。これまでとは桁違いの高速通信機能を持つ5Gは、ゲーム業界におけるオンライン通信の抜本的な問題を解決するかもしれません。現在使用されているP2Pを使った通信も、5Gを活用することで高速化や同時接続数の増加などに期待できるため、ユーザーに新時代のゲーム体験を提供できます。
そこで今回の記事では、5G通信の特徴とP2Pにおける有効活用について解説します。
ゲーム開発やオンライン環境の改善を行う際には、こちらの情報を参考にしてみてください。
5Gとは、第5世代移動通信システム(5th Generation)を省略した言葉で、さまざまな点で現在の通信技術を超えるシステムとして話題になっています。「高速通信」、「大容量通信」、「多量の同時接続」、そして「超高信頼かつ低遅延の通信」などの特徴があり、スマホ・タブレット・パソコンなどの通信機器のほか、IoTや自動運転技術への応用がはじまっています。今後5Gの技術が浸透していけば、より快適な通信環境の下で生活ができるようになるでしょう。
5Gは、「Sub-6」の6GHz帯未満と、「ミリ波」の30~300GHz帯における2種類の周波数帯を使って通信を行います。日本国内では3.7GHz帯と4.5GHz帯、ミリ波では28GHz帯が使用されるようになっています。周波数が高くかつ広域の通信領域を確保できるため、大容量で高速の通信環境を整備することが可能です。理論値では、下り最大20Gbpsの高速通信が可能になっているため、5Gではよりリアルタイムに近い通信が実現するでしょう。
5Gの具体的なメリットには、「無線による高速通信」や「低遅延化」などがあります。
以下では、それぞれのメリットの詳細について解説します。
参考:https://www.4gamer.net/games/449/G044914/20210825118/
5Gでは無線通信が高速化するため、よりスムーズな通信が可能となります。例えば、オンラインビデオ会議や動画のストリーミング再生などのサービスを、より快適に利用することができるでしょう。ゲームにおいては、大容量ソフトのダウンロード速度や、オンライン通信の処理スピードが改善されることが期待できます。
特に他者と遊ぶことを前提としたオンラインゲームでは、高速通信処理が行われるかどうかが、ユーザーのプレイ体験に大きく影響します。細かなゲーム上の動きをリアルタイムで通信するオンライン環境においては、現状有線LANを使用することが推奨されています。しかし、5Gが普及することで、無線のままでも快適なオンライン通信が実現できる可能性があるのです。オンラインゲームをはじめるハードルが下がることになるので、5Gによってオンラインゲームユーザーの人口増加にも期待できるでしょう。
参考:https://www.famitsu.com/news/201909/07182824.html
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20200406013/
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20180129012/
https://www.fenet.jp/infla/column/news/industry/5g-games/#3%EF%BC%9A%E9%80%9A%E4%BF%A1%E3%81%8C%E5%BF%AB%E9%81%A9%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B
5Gは、通信全体の低遅延化を行い、低レイテンシーを実現します。CUPS(Control/User Plane Separation)によって各地にある基地局の通信を上手に活用し、ネットにおける遅延を最小限に抑えることができるとされているのです。また、MEC(Multi-access Edge Computing)という分散クラウド技術を使うことで、ネットの転送処理をこれまで以上に個々のユーザーに近い場所で行えるようになるため、直接的な通信経路を短くして遅延を防ぎます。これらの技術は、ゲームにおける通信中の遅延軽減につながり得ます。低レイテンシーにつながるあらゆる技術が考案されている点も、5Gの特徴です。
参考:https://www.famitsu.com/news/201909/07182824.html
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20200406013/
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20180129012/
5G通信は、さまざまなデバイスやネットワークに影響を及ぼすと期待されています。ゲーム業界では「P2P」への有効活用にも期待が集まっており、ゲームにおけるネットワーク事情が大きく変容するきっかけになると考えられています。
そもそもP2P(Peer to Peer)とは、ユーザーのパソコンやネットワーク同士をつなげてオンラインゲームをプレイする方式のことを指します。P2Pでは、中央で集中的に管理を行うサーバがないため直接ユーザー同士を結びつけることができ、結果的に遅延を少なくしてゲームを楽しむことができるのです。利用者が増えても規模を変える必要がないスケーラビリティも特徴で、オンラインゲームの通信手法として活用されています。
運営側からみると、サーバのコストがかからず、分散化されているため通信障害が全体に影響しにくいといった点が、P2Pのメリットです。そのため、既に多くの企業がP2Pを使ったゲームを開発しており、一般的なシステムのひとつとして機能しています。5GはそんなP2Pへの有効活用から、例えば以下のようなメリットが生まれると予想されています。
5Gの普及によってP2Pへの対応が一般化すれば、より快適なオンライン通信によるゲーム体験が実現すると考えられます。5Gは先にも解説した通り、無線・携帯電話回線でも快適にオンライン対戦や協力プレイが可能になる高速通信形態です。現在主流の4Gと比較するとその通信速度は10倍となるため、圧倒的なスピードを活用して通信の高速化が図れるでしょう。
オンライン対戦・協力中の遅延も、4Gの1/10という低遅延を実現可能とされています。具体的には1ms以下に通信の遅延を抑えられるため、従来のゲームのオンラインプレイにおける問題の多くを解決できるでしょう。5Gが普及すれば、無線でもスムーズなオンライン通信が実現できる可能性が高くなるため、これまで快適なオンライン体験ができなかった多くのユーザーにもゲームの面白さを伝えることが可能です。
参考:https://elite-lane.com/peer-to-peer/
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20180129012/
5G をP2Pに活用することは、これまで以上に大人数で同時接続しオンラインゲームを楽しむことにもつながります。5Gでは、4G時代の100倍の同時接続数を安定して実現できると言われているため、ゲーム内での大規模イベントの実施なども検討可能です。
近年はMMOFPS「Planetside 2」が同時接続数1,158人を達成し、「最も大規模なオンラインFPSバトル」としてオンラインFPSにおける同時対戦人数のギネス世界記録を更新しています。そのほか、2021年発売の「バトルフィールド 2042」は、手軽に最大128人での同時接続対戦が可能な点が売りのFPSゲームです。大勢のユーザー数を前提とした大規模オンラインゲームは、今や珍しいものではなくなってきています。5Gの活用が進めば、さらに大人数かつ安定したオンラインゲームがP2Pでも行えるようになるでしょう。
参考:https://elite-lane.com/peer-to-peer/
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20180129012/
https://www.famitsu.com/news/201909/07182824.html
https://www.gamespark.jp/article/2015/01/27/54458.html#:~:text=%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88-,%E3%80%8EPlanetside%202%E3%80%8F%E3%81%8CFPS%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%90%8C%E6%99%82%E5%AF%BE%E6%88%A6%E4%BA%BA%E6%95%B0%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C,%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%81%8C%E5%8F%82%E5%8A%A0
https://www.famitsu.com/news/202106/10223022.html
P2Pにおける5Gの活用は、将来的に重要なシステム環境となる可能性があります。特定のゲームに関しては、P2Pによる高速通信や大規模の安定通信が、必須になることも考えられるでしょう。
以下では、5Gの高速通信が大きな影響を及ぼすゲームについて解説します。
P2Pと5Gの組み合わせによる高速通信は、ラグが致命的となるオンラインゲームに特に必要とされます。
例えば格闘ゲーム、アクションゲーム、FPSゲームなど、ラグによって快適性が失われるゲームが該当します。今後ゲーム技術が発展していけば、より精密な動作や美麗な映像を駆使したゲームが開発されることが予想されます。そういった技術をオンライン上でスムーズに表現するためにも、高速の5G通信を有効活用したP2Pの重要性は高まるでしょう。
参考:https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20200406013/
P2P通信を実装する際には、いくつか課題とされるものがあります。これから5Gの普及に合わせてP2P通信を実装するのなら、課題を事前に把握してプロジェクトをスムーズに進めることがポイントです。
以下からは、P2P通信を実装する場合の課題について解説します。
P2Pをゲーム環境に実装するには、基本的に、STUNサーバ・TURNサーバの2つが必要です。STUNサーバとは、デバイスの直接通信において相手のパブリックアドレスやNATの種類、ローカルポート番号などといった情報を入手する仕組みです。それぞれのSTUNサーバが双方にリクエストを実施し、お互いの情報を交換することで通信を行います。
TURNサーバとは、他のデバイス同士のメッセージを仲介する仕組みです。P2P通信が使えない状態で活用される通信経路となり、P2Pで通信できる場合にはP2Pが優先して使われますが、何らかのエラーによって使用できない場合にはTURNサーバが利用されます。
P2Pでは相手のIPアドレス等の情報を把握した状態で通信をする必要がありますが、異なるNAT内のパソコンがIPアドレスを自動で知ることはできません。そのためP2Pには、STUNサーバ・TURNサーバの実装が欠かせないものになっています。このSTUNサーバ・TURNサーバの実装をスムーズに行う環境を整備できるかが、P2Pの導入における課題のひとつです。
参考:https://qiita.com/okyk/items/a405f827e23cb9ef3bde
P2Pの実装時には、ユーザーの快適さを考慮するのもポイントとなっています。ゲーム上のマッチングのしやすさや、メッセージやチャットによるプレイヤー同士の交流など、P2Pを使ってどのような環境を実現したいのか事前に計画しておくのがおすすめです。
オンラインゲームにおける理想的な通信環境とは、ただ同じゲームをプレイできる状態を維持するのではなく、ユーザー同士で快適にコミュニケーションを取れる環境だと考えられます。5Gによる高速通信と低レイテンシーの効果は、ゲーム中のコミュニケーションを快適なものに進化させ、ユーザー同士の交流を活性化させるでしょう。ユーザーが快適に5Gの良さを実感できるように、P2Pのシステムを実装する計画を立てることも課題に含まれます。
P2Pの環境をスムーズに実現するには、当社の「Diarkis」をご活用いただくことがおすすめです。Diarkisは、STUNサーバとTURNサーバの機能を持つサーバクラスターを簡単に作成できるため、クライアント間の直接通信で低遅延のゲームプレイを実現できます。別途サーバーを確保する必要がなく、分散型アーキテクチャが高い可用性を実現できるのが特徴です。
Diarkisには「Automatic Hole Punching」と呼ばれる機能があり、P2P通信がはじまる前に相互通信が可能な状態にする処理を自動で実行することができます。またマッチメイキング、ルーム作成、ユーザー同士のコミュニケーションシステムなど、さまざまな機能も活用できます。Diarkisの導入におけるメリットは多く、P2Pの環境整備にプラスして快適なオンラインマッチングシステムを開発可能です。
5Gは急速に私たちの生活に浸透しはじめていますが、現在は4Gの設備をベースに作られるNSA(Non Stand Alone)方式が主流なため、5Gを活用するには5Gに向けて作られたSA(Stand Alone)方式の設備の普及を待たなければなりません。今のうちにDiarkisでP2Pを導入し、本格的な5Gの到来に備えることを検討してみてはいかがでしょうか。
参考:https://www.4gamer.net/games/999/G999902/20200406013/